未知の彼方で君を待っている~YONDER~ヤンダー (韓国ドラマ)욘더 5話・6話(最終回) あらすじと感想

ヤンダー


ヤンダー(Yonder)욘더 全6話 2022年 TVINGオリジナルシリーズ

neroさん

第5話あらすじ

「死後の暮らし」

BY N BY社からの帰り道、キム・ジェヒョン(シン・ハギュン)のもとへ1本の電話が入る。電話の相手は警察で、昨夜会ったチェ・ハンギ(チャ・スンベ)が車内で死亡した状態で見つかったというのだ。他に家族のいないハンギの身元確認に応じたジェヒョンは、冷たくなったその身体を見て、「もうこれ以上失うものはない」と語ったハンギの言葉を思い出す。

その日、自宅に戻ったジェヒョンは、クローゼットのなかから1枚のシャツを取り出した。ブルーのシャツに着替えたジェヒョンは、真っ青な薬のようなものを飲み干す。そしてセイレーン(イ・ジョンウン)から受け取ったブロフィンを装着してベッドに横になると、ゆっくりとその目を閉じた。

ふたたび目を開けたジェヒョンの前には、セイレーンが。驚くジェヒョンに向かって、セイレーンは「ヤンダー(Yonder)へようこそ」と微笑む。差し出されたジャスミンティーを飲んだ後、ジェヒョンは妻イフ(ハン・ジミン)のもとへ向かった。暗いトンネルに差し掛かると、セイレーンは「ここを通り過ぎた人々は、時間を気にせずに生きます。時間に依存すれば、死に対する恐怖が生まれるからです」と語った。そして、自分はここまでだとセイレーン。

海岸沿いに佇む平屋へ向かったジェヒョンは、そこで洗濯物を干すイフと再会する。ジェヒョンが着たブルーのシャツを見て、「その服、着ているの初めてみた」と目に涙を浮かべるイフ。見せたいものがあると言ってジェヒョンの手を引いたイフは、ベビーベッドに横になる娘ジヒョを紹介した。戸惑いながらも握られた指先から、その温もりを感じるジェヒョン。

小説が書きたいと言っていたジェヒョンにタイプライターをプレゼントするイフ。壁に飾られた絵も、後ろ向きの男女から正面を見据えて佇む男女の姿に替わっていた。イフが作った手料理を食べ、幸せを噛みしめるジェヒョン。セイレーンが言ったように、ヤンダーは現実の世界となんら変わらない世界だった。

ジェヒョンとイフの家の隣には、年老いたお婆さんが暮らしていた。ある日、ジェヒョンに声をかけたお婆さんはタレに漬け込んだカルビを差し出す。お返しにチャプチェを作ることにしたイフは、ジェヒョンを連れてマートへ。買い物の帰り道、ジェヒョンは父親と夕食の準備をするピーチ(ユン・イレ)と顔を合わせた。父親と一緒に幸せそうに暮らすピーチを見て、ジェヒョンはほっと安堵する。

ヤンダーに来てからというもの、ジェヒョンもまた、何一つ心配なく幸せな生活を送っていた。いまだにそんな生活が不思議だと語るジェヒョン。いつここに来たのだったかと尋ねるジェヒョンに、「さぁ、そんなの重要かしら?」とイフは返した。

手作りの焼き菓子を作ったイフとジェヒョンは、ピーチの家へ。その日はヤンダーにやってきた人々が集まって、ホームパーティーが開かれるというのだ。久々に再会した皆と挨拶を交わすジェヒョン。その中には、ハンギとその家族の姿もあった。ワイングラスを手にしたハンギは、ジェヒョンに向かって「ヤンダーへようこそ」と言う。ピーチと2人きりになったジェヒョンは、ここの生活はどうかと尋ねた。幸せだと答えるピーチ。

幸せそうに微笑む人々のなか、ハンギだけはどこか神妙そうな表情を浮かべる。そして、毎日同じ人たちと会って、毎日同じように話をし、毎日同じ事の繰り返しだと話すハンギ。「また会おう」と言ってハンギと別れ、家に戻るジェヒョン。翌日、娘ジヒョの身長を測ったイフは何かに気付いてハッとした。そして、ジェヒョンのもとへ行き「ジヒョが変なの…」とイフ。

第5話感想

月日が流れてもちっとも成長しない娘ジヒョ・・

これは一体どういうことでしょうか。パーティーの場でハンギが言っていた、「毎日同じことの繰り返し」という言葉が気になります。一見何の心配もなくただ幸せな毎日の反復のように思われたヤンダーは、裏を返せばなんの変化もない世界ということなのでしょうか。なんの変化もない家族、なんの変化もない隣人、なんの変化もない日常。もしかするとハンギは、いち早くその現実に気付いてしまったのかもしれません。それは果たして、「幸せ」と呼べるのでしょうか。

そういえば第5話の冒頭で、セイレーンはヤンダーに来た人々は時間を気にせず生きると言っていましたね。いつここへ来たのかと考え込むジェヒョンに対し、そんなの重要ではないとイフ。時間に依存することは、死に対する恐怖が生まれること。ヤンダーでは時間にとらわれることなく、心配事もなしにただただ幸せな日々を繰り返すのでしょう。

そして同じく、娘のジヒョがいくらたっても成長しないことに気付いたイフ。果たして2人は、この現実をどう受け止めるのでしょうか。

【豆知識】ヤンダーへやってきたジェヒョンがセイレーンと車に乗るシーン、そしてエンディングで流れたのは女性歌手Sondia(ソンディア)が歌うOST「DIVER」。

第6話(最終回)あらすじ

「各自の天国」

家から飛び出したイフは、ジヒョの身体がまったく成長していないようだと話す。いくら食べさせて寝かせても、一向に大きくならないというジヒョ。パニックに陥ったイフは、無理矢理ジヒョにミルクを飲ませようとする。泣きじゃくるジヒョと躍起になるイフを見て、ただただ茫然とするしかないジェヒョン。

翌朝、ジェヒョンはジヒョの泣き声で目を覚ます。すると隣で寝ていたはずのイフの姿はなかった。慌ててジヒョに駆け寄り、抱っこしてあやすジェヒョン。人工知能のスイッチが入ると、イフが明け方体調を崩してプロトコルセンターに運ばれたと告げる。隣に住むお婆さんにジヒョを預け、イフが入院するセンターへと向かうジェヒョン。そこでジェヒョンが目にしたのは、ドクターK(チョン・ジニョン)の姿だった。

ドクターKに案内されてセンターへ向かうジェヒョン。ドクターKの話によると、イフは幸せを維持するプロトコル(データをやりとりするために定められた手順・規則)に拒否反応が見られたようだという。ジェヒョンがなぜ子供が成長しないのかと尋ねると、ドクターKは「永遠というのは変わらないこと。だから老いることもなく、死ぬこともない。イフさんはそんな幸せを選んだから、ここに来たのです」と答える。子供が一生成長しないと知って絶望したジェヒョンは、「これがあんたの言う天国か?」と一言。するとドクターKは、ヤンダーはイフだけの天国ではなく、ここにいるすべての人々にとって各自の天国なのだと語る。

それが天国ではなくただの孤立だと知ったジェヒョンは、怒りをあらわにした。その後、センターに到着したジェヒョンは、イフを連れて外へ出る。一生死を受け入れる練習をしてきたと話すイフ。そしてジェヒョンからプロポーズを受けた日の記憶を、永遠に大切にしたいと思ったのだとイフは語る。「だから私はここに来たの。私にはこの記憶が一番大事だから」そんなイフに向かって、ジェヒョンは今この瞬間の方がもっと大事だと話した。ヤンダーに来て目にしたイフの幸せそうな姿が、とても良かったとジェヒョン。イフはここでジェヒョンを待つ時間が幸せだったと語り、「これ以上何も望むことはない。これが私にとっての天国だった」と告げた。その日、イフを連れて家に戻ったジェヒョンは、“幸せ”だと思っていた外の風景が、ただ永遠と同じことの繰り返しだったと気付いた。

病院で受け取った薬を手にとるイフ。ベンチに並んで腰かけた2人は、一緒にその薬を飲む。ジェヒョンの肩にもたれかかり、ふと空を見上げるイフ。そして2人は雲の合間から差し込む光を眺めながら、ゆっくりと目を閉じた。

ふたたびジェヒョンが目を開けると、そこには心配そうに顔を覗き込むプロパク(ペ・ユラム)とチョ・ウン(チュ・ボビ)の姿があった。一時は危険な状態だったが、ウンのおかげで一命をとりとめたと聞かされるジェヒョン。

ジェヒョンが生死の境をさまよっている間、世の中はより深刻な状況に陥っていた。ヤンダーの存在を信じ、ヤンダーへ行きたいと望む人々が次々と安楽死を選択し、さらに自ら命を絶っているというのだ。プロパクから話を聞いたジェヒョンは、BY N BYへ向かう。

セイレーンと会ったジェヒョンは、今すぐヤンダーを閉じる必要があると話す。しかし、ヤンダーに夫と娘がいる以上、自分の手でヤンダーを閉じることはできないとセイレーン。そんなセイレーンに向かって、ジェヒョンは「誰しも自分の力では閉じることのできない扉がある。でもいつか、その扉を閉じてくれる人が現れるだろう」と告げた。

第6話(最終回)感想

最後はヤンダーを去ることを決意したジェヒョン!

妻イフに会いたい一心で自ら死を選び、ヤンダーへ向かったジェヒョン。しかしそこにあったのは永遠につづく幸せではなく、まったく変わらない日常だったのです。人々の記憶から作り出した死後の世界ヤンダー。結局それは限定的なもので、私たちが望む“永遠の幸せ”ではありませんでした。

死を決意して空を見上げるジェヒョンとイフの姿が、なんとも切なかったです。独特な世界観で描かれた本作。まるで一編の映画を見ているかのような、壮大な世界がそこにはありました。

本作を手掛けたイ・ジュニク監督が一度は映画化に失敗した作品と言っていましたが、こうして今回、OTTという新たなコンテンツで映像化することができて本当によかったです。ドラマの映像美はもちろん、音楽、俳優陣の演技力など、どれをとってもまったく穴のない作品。とくに主演のシン・ハギュンとハ・ジミンのカップルがとても美しく、見ていて惚れ惚れしてしまいました。シン・ハギュンの目で語りかける演技も健在で、非常に見ごたえのある作品です。

無駄のないストーリー展開と高い演技力が見どころの本作。全6話で全編通しても200分強というランニングタイムなので、一気に見られるのも魅力のひとつです。見終わった後にふと人間の生と死、そして“幸せとは何か”と考えさせられる、そんなドラマでした。



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